目から鱗の尺八上達術 −あなたの努力は報われていますか?−

【第4回】腹式呼吸は自然な呼吸法 2010年4月(279)号

 2回にわたって口の構造を見てきました。しかし、構造だけをまねしてもなかなか上手く行きません。実は息の吐き出し方と口の構造はセットになっているからです。「口だけを形作り、唇で出来た隙間から息を出す」という感覚よりも、むしろ「ハーッと出している息を唇で挟む」と思った方が良いかもしれません。そして、息の吐き方はいわゆる腹式呼吸でなければなりません。

腹式呼吸を実感する

 腹式呼吸は、練習を重ねるとだんだん出来るようになるものではありません。普段の呼吸は腹式呼吸であることは最初の回にお話ししました。普段の呼吸をそのまま利用出来るか出来ないか、または、普段の呼吸を意識出来るか出来ないか、だけです。
 もちろん腹式呼吸で演奏出来る人は、様々な練習法で「さらに上達する」ことは当たりまえです。でも、出来ていない人が上達のための訓練法で「だんだん出来るようになる」ことはありませんので、今日のうちに出来るようにしておきましょう。
 まず、腹式呼吸になっているかどうかを確認しましょう。
 鏡の前に立って下さい。尺八を構えて、息をゆっくりたくさん吸います。そのときに肩を動かさずに吸えますか? もしも、肩が上がり、おなかが引っ込んでいる場合には、腹式になっていません。そのような人はまず、普段の呼吸はどのようにしているかを確認しましょう。
 簡単です。ソファーか椅子でひと眠りするときの感じで浅くかけ、背をもたれてください(写真)。しばらくゆっくりします。おなかに手を当てて様子を見ます。普段の呼吸はちゃんと息を吸うとおなかが膨らみ、吐くとへこみます。これが腹式呼吸です。
 この無意識で呼吸している感じをしっかりと実感して下さい。意識したり無意識にしたり、とにかく普段の呼吸を確認して下さい。
 手を強く当ててその手を押し戻すように息を吸ってみるのも良いです。そのときに吸っているのにおなかがへこんだ場合には、意識しすぎておかしな息の吸い方をしてしまっているのです。最初から焦らずやり直して下さい。
 どこが一番出たり引っ込んだりしているかも確認しましょう。その部分がたぶん呼吸法によく出てくる「丹田」という部位なのでしょうか? 「腹筋」「腹部」とはちょっと印象が違いますね。いずれにしても丹田とか腹部とかの「筋肉を動かして呼吸する」のではなくて、「呼吸すると動くところが丹田とか腹部」ということです。

音の出始めを実感する

 さて、出来たかな?と思ったら前回までの口元を思い出しながら、そして自然な呼吸で尺八を口に当てて息を出してみましょう。もちろん椅子に浅く腰かけたままでやって下さい。「楽器を鳴らす」というより「勝手に鳴っている」ような感じだったらOKです。
 尺八を持つと、元の呼吸に戻ってしまう人がほとんどです。周りに人がいたら、先ほど確認した「おなかが出たり引っ込んだりする部分」を押してもらい、その手を押しのけるように息を吸ってみるのも良いと思います。
 吐くときは吸った状態からまずは力を抜きます。口を開けた状態では「ため息」と同じです。開いた口からは大量に空気が放出されますので、その空気をこれまで2回にわたって見てきた「口の作り方」を参考にして、唇だけで放出量をコントロールして下さい。唇の内側に空気の圧力を感じるはずです。
 この圧力を感じながら「オー」とか「モー」と低い声で発音するような感じで息を出します。尺八も「ボー」というような印象の音です。決して「ビー」「ミー」というような印象ではありません。
 これが出来たら、次は息を「弱く」からだんだん「強く」出してみます。そーっと吹くと「ホー」となり、息をたくさん出すと「ボー」という感じです。
 息を徐々に出してゆくとどこかで音が現れ始めます。この「音が無い状態から音が出始める境目」を是非実感して下さい。この、音が出るか出ないかの境目をコントロール出来るようになることは、今後大きな音を出せるようになるためにとても重要なことです。