目から鱗の尺八上達術 −あなたの努力は報われていますか?−

【第8回】技術編2 強く(弱く)吹いてもピッチを保つ方法 2010年8月(283)号

不安定要素を逆手に取る

 尺八は歌口の開口面積が大きいのが特徴ですが、その分ほんの少し歌口部分を変化させただけでピッチが大きく変わるというデメリットもあります。が、そのデメリットさえも特徴として使ってきたのが尺八の歴史でもあります。
 前回、メリと書かれた音を、あえて顎によるカリと指孔の開口面積を小さくすることの組み合わせで、比較的大きな音を出す方法を紹介しましたが、これもこういった不安定さを逆手に取った方法のひとつです。(メリと書かれた音をいつも顎でカルべきだ、と言うことではありません)

吹奏の強弱と顎当たりの強弱の関係

 エアリード楽器は、歌口の条件を一定にした場合、強く吹くとピッチが上がり、弱く吹くとピッチが下がるという特性があります。リコーダーを吹いてみるとその特性がよくわかります。
 もうひとつ、歌口を顎に押し当てる力もピッチに関係します。ブレスの条件を一定にした場合、歌口を顎に強く当てると唇が歌口にメリ込み、開口面積を狭めますから、強く当てることはピッチを下げ、弱く当てることはピッチを上げることになります。

 このことだけを見ると、何とも不安定で不便な楽器に思えますが、上記ふたつを表(上)にするとおもしろいことが分かります。
 強く吹くとピッチが上がりますが、歌口を強く押し当てるとピッチは下がります。逆に弱く吹くとピッチは下がりますが、歌口を弱く当てるとピッチが上がるのです。もしあなたが大きな音を出すときに強く顎に楽器を押し当て、弱く吹くときには弱く押し当てることが出来たなら、相殺されてピッチが変化しないことになります。
 つまり強弱のピアノを「弱く優しい音」、フォルテを「強くしっかりとした音」と理解すれば、顎に楽器を押し当てる力をその表情通りに変化させることが出来ます。そのことだけで実はピッチは変化しにくくなるのです。もちろん、表のように単純な相殺にはならないでしょう。しかし、いちいち顎のメリカリでピッチを調整することは少なくなります。
 ところが、小さな音を口を締めて小さなノズルから細い息を出そうなどと、力を入れる方向に考えてしまうと、より強く押し当てて強く吹くことになり、結果、相乗効果になり、カッてどうにかしなければならなくなるのです。そういった苦しさは苦しい音となり、聞いているものに苦痛を与えます。

へたくその条件

 私の講習会で「へたくそに聞こえる演奏方法」をよく紹介します。上手に演奏する方法を100並べるより、へたくそに聞こえる方法のいくつかをやめる方が遙かに上手に聞こえます。
●尺八をがっちり握ります。
●そして、音楽上の表現とは無関係に口元に強く押し当てます。
●甲音は乙音よりさらに強く押し当て、メリ気味にして強めに吹きます。
●ツのメリなどは、指孔をかざす程度にして顎でしっかりとメリます。
●ツのメリが近づいてきたらメリはじめ、ツのメリが終わっても完全に元に戻さずに、ちょっとメリ加減のままにして、またメリが近づいたらメリはじめ、また、元に戻すのを忘れます。
●そのように演奏しているうちに、もうこれ以上メルことが出来ない状態になったところで、極めつけ、都山のピや琴古の五のハを5孔を全開にして強く吹きます。
●出来れば一音一音に思いを込めて「フーフーフー」と息で押すように吹き込みます。
●さらに息を吸うときに唇をなめてから「へー」というような音を立てながら息を吸いましょう。
●そのときには是非、肩や首・胸あたりに力を入れましょう。腹筋を使うのも良いですね。

 これで、拍手が巻き起こるような「へたくそ」の完成です。右記9項目をやめることが出来たら、あなたは上級です。