目から鱗の尺八上達術 −あなたの努力は報われていますか?−

【第12回】技術編5 いろいろな指遣い(その2) 2010年12月(287)号

ハの半音←→ハ

 先月号の続きで、今月は五度倍音に関するお話です。
 尺八も管楽器ですから、やりようによっては五度上の倍音を出すことが出来ます。五度倍音とは、管内に粗密のサイクルが3つ起こって普通の五度上の音(ファ→ドやド→ソの関係)が出ることを言います。(図@)

 簡単な五度倍音を体験しましょう。
 ツの指遣いで第4孔を開けます。粗密のサイクルを3つにするのに丁度良いようです。その音は甲のハと同じです。つまり、ツの指遣いでツの五度上(ファ→ド)が出ているのです。
  これを使うと、甲だけに限りますが、5孔尺八で不得手とされている「ハの半音とハ」の繰り返しが明瞭に発音できます(図A)。ハの半音のときに開けている4孔のわずかな隙間は、ツの指遣いで5度上の音、つまりハを出すためにそのまま利用しています。指は左手薬指と右手薬指が交互に動く形になります。小さな音でもピッチが下がらないので、特にハの半音のようなどうしても小さくなってしまう音の次としては通常のハよりも利用価値が高いかも知れません。私は多用しています。尺八独奏曲として有名な長澤勝俊作曲『萌春』の一部は「これで演奏すべき」と言っても良いくらいですね。

四とチ

 実は五度倍音とは知らずに使っている音があります。それは「四」(シ)という音です。よく考えると、第5孔は開けていますが、指遣いとしては「チ」だと気づいていましたか? つまり四はチの五度倍音を鳴らしているのです(ラ→ミ)。
 ここで注意事項です。よくチを強く吹くと変な音が出るという人がいますが、要するにこの指遣いは注意しないと四が出てしまうということなんです。
 同じ指で違う音が出せるのが管楽器です。どの音を狙うのか、常にその音を想像して体をそれに合わせることがいかに重要かがわかると思います。

大甲のツ

 さて、5孔尺八では出ないとされている「大甲のツ」はハの半音の五度上です(シ♭→ファ)。理論上はそうなのですが、なかなか普通の尺八では出ないと思います。こういった考え方を基に、指孔の位置と大きさを調整した楽器が、私の作ったオリジナルタイプの尺八なのです。これだと指遣いはツ(ファ)、レ(ソ)、チ(ラ)、ハの半音(シ♭)で、その5度上(ド、レ、ミ、ファ)の音も簡単に出すことが出来ます。宣伝めいてしまいますが、「大甲のツ」は「ハの半音」の指遣いで出すことが出来るのです。

 このように、簡単な理論を知っていると、いろいろな組み合わせで意外な指遣いを発見できます。皆さんもチャレンジしてみて下さい。そして是非発表して下さいね。決して門外不出とか、秘伝なんてこと、しないようにお願いします。

大甲のレ(オマケ)

 レの指で4孔を少し開けると、異常に強く吹き付けることなく大甲のレが簡単に出せます。