目から鱗の尺八上達術 −あなたの努力は報われていますか?−

【第13回】プロは何故息が続くのか? 2011年1月(288)号

肺活量

 プロは何故息が続くのか?
 「それは肺活量が訓練で人よりも大きくなっているからです」という答えだったら、皆さん肺活量を増やす訓練で上達間違いなし!なのですが、残念ながらそうではないのです。
 もちろん肺活量は大きいにこしたことはないでしょう。私は昨年検査したら、なんと2800襁程度しかなく、看護婦さんに「まじめにやって下さい」などと言われ、もう一度やりましたが、結果は3200。「私は尺八をやっていて、かなり肺活量は大きいはずです」と訴え、さらに何度かやらせてもらいました。最終的に3400を少々上回っただけでした。
 こんな私ですが、コンサートの後には「いったいどのくらい肺活量があるのですか?」などと聞かれるわけです。というわけで、息が長く続くのは「肺活量が大きいから」ではないようです。

抵抗感

 では、どういうことなのでしょう?
 深呼吸して息を吐き出すと、一瞬でなくなりますね。ところが声を出しながらだと、なかなか息はなくなりません。同じ声でもハスキーな声を出すとかなり早くなくなってしまいます。また、喉をしぼって関取の真似のような声を出して見ると、息は出て行きませんが、なんだか苦しくなりますね。早く息を出したくなります。
 いろいろやってみると、良い声を出すのが一番ラクで、息も長く続きます。
 これは声帯という振動子が振動することで、息を通過させたりせき止めたりを繰り返すので、息をはき出すことに対しての「抵抗」が出来ることになります。大雑把に言うと、半分の時間はせき止められていることになります。この抵抗が少ないのが深呼吸やハスキーな声、抵抗が大きすぎるのが関取の真似の声ですね。丁度良い抵抗感のときに長い時間息をはき出すことが出来るのです。
 尺八にはこのような声帯やリードのような振動子はありませんが、エアリードという空気の振動が起きるときに息がせき止められます。演奏していると、唇のノズルの大きさの割に空気が出づらくなり、物理的な抵抗として感じます。この抵抗感が大きければ大きいほど、音量の割に息が長く続く、ということになります。
 ただし、息を止めているのが苦しいように、抵抗が大きすぎても息を止めているような苦しさが先に表れてきますから、これまた苦しいのです。
 良い音が出ているときには沢山の息をはき出そうとしているのに、ノズルに栓をされたような感じですから、体内の圧力は高くなります。この状態を聞きかじりで勘違いすると、「ノズルをキュッと閉じる」「胸に力を入れる」ことで息が出ないようにしてしまいます。これでも体内の圧力は高まりますが、これでは大きなエアリードは生まれませんから、音も小さく、また、そのような状態で出された音は「関取の真似」のような窮屈な音しか出ません。

抵抗感を味わえるノズルを作り出す練習方法
(おさらいです)

 良い音は良い声のように息を出します。
 声を出すときには先に声帯を緊張させているでしょうか? していません。喉を緊張させるよりも一瞬先に息を吐き出しているはずです。
 尺八も息を先に出してから口のノズルを作る練習をしましょう。決して先にノズルを作ってから息を出してはいけません。はき出された空気を唇で「捕まえる」感じです。
 最初は本当に「はー」と息を出しながら徐々に口を作って下さい。段々ほぼ同時に、しかし、一瞬息が先に出るように、そしてなるべく息の出し入れが静かになるように練習して下さい。静かにということは息の量を少なくするのではなく、多くの息を出し入れしている割に静かになることです。
 この息の出し方・吐き方は舌根を下げて「あー」と声を出すのと同じ感覚で行って下さい。息の方向はろうそくを消すときの方向です。つまりろうそくが都合の良いところに有ると仮定して、消そうとしてください。
 先に息を出して後からノズルをつくると、多少ブレスの方向がずれていても、一番効率の良い方向にブレスが引き寄せられます。また、人間も一番効率の良いところに微調整するようになります。
 このように、先にノズルを作って勝手に息の方向を自分で決めておくよりも、先に息を出してからノズルを作る方が、自然の現象から正しいブレスの方向と、丁度良い口の閉じ加減を学ぶことが出来るメリットもあるのです。