目から鱗の尺八上達術 −あなたの努力は報われていますか?−

【第15回】基礎知識編2 貴方の尺八は大丈夫? 2011年3月(290)号

 先月号では「尺八のピッチの不安定さ」について書きました。「フルートにすればよかった」と思った人もいるかもしれませんが、フルートも「誰が吹いてもいいピッチで演奏出来る」楽器ではありません。原理は一緒です、ただし歌口が小さいので、変化が少ないのは確かで、その分表現の幅も小さくなります。
 また、フルートを演奏する人の人口も多いので、耳にする人の演奏もそれなりの演奏がほとんどなために「レベルが高い」ような気もしますが、それも表面上の話で、隠れて練習している段階ではみな同じです。
 ということで、本題です。

2つのタイプ

 写真は初級者(@)と上級者(A)の吹き方の決定的な違いです。貴方はどちらですか?
@――歌口の開口面積を狭くする吹き方ですので、音も小さく細く、ピッチも低くなります。
A――雑音も少なく、無音から大音量まで自在にコントロール出来るうえにピッチも安定します。

 世の中には「尺八吹きのほとんどは初級者だから」との考えで、基本設定条件を@にしている製管師も少なくありません(製管師本人が@である場合も少なくない)。ですから@の吹き方で@を基本に作られた尺八を演奏している間はピッチについての疑問はないでしょう。しかし、それはあくまで「初級レベル」を永遠に維持するという前提です。
 ピッチについて疑問を持つ人は
A、楽器が@で、演奏レベルが上がってきた人。
B、初級だがAを前提とした尺八を手に入れた人。
C、上級レベルの演奏が出来るのに@を前提とした尺八を手に入れた人。
D、Aを前提にした尺八について、高度なレベルのピッチ感を感じる上級者。
E、本当にひどい尺八を持っている人。

 およそこのような分類になります。
 もしも、貴方がAあるいはCに分類されるなら、迷わず尺八を直してもらうか、Aに対応した尺八に買い換えましょう。Bならば、「吹き方」について基本を学びましょう。Dの人は製管師と十分に相談しながら理想の楽器として調整してもらいましょう。Eについては論外にしたいのですが、実はこれがものすごく多いのです。
 尺八は外観だけなら、器用な人であればすぐに作ることができます。焼き印もすぐに作ってくれます。趣味で作っていても、作品はどうしても誰かに見てもらいたいし、出来れば使ってもらいたいものです。ということで出回る「見た目立派、中味いい加減」の尺八は今後も無くなることはないでしょう。

「初心者歓迎」なら

 ところで、貴方は正しい吹き方を習ったでしょうか?
 尺八の世界は各流派に分かれてそれぞれに免状を発行しています。しかし、それはあくまで「我が流の音楽を教えてもいい」という免状であって「尺八の吹き方を指導出来る人」という免状ではないのです。
 「音はそのうちでますから、まずは簡単な曲から練習しましょう」などというのは、「音の出し方は他で習って下さい」と言っているのと同じです。それなのに「初心者歓迎」などと書いてあるのですから、問題ではないかと思いますね。
 写真@は、人間としてごく自然なポーズだろうと思います。尺八は唇より下に当てますから、息を下向きにしたくなるのは当然なのです。でも、上級者はというより「プロは」Aの吹き方なのです。これにはちゃんとした合理的な理由があります。
 次回は「プロに見る合理的演奏方法」です。