目から鱗の尺八上達術 −あなたの努力は報われていますか?−

【第21回】基礎的練習方法1 ロングトーンの仕方 2011年9月(296)号

ロングトーンの弊害

 「ロングトーンに対して弊害とは何事か!」と怒られそうですが、ちゃんと分かってやらないと、本当に「弊害」になります。
 皆さん、ロングトーンの練習の時に「どの程度の大きさで、どの程度の長さの音を出そう」と考えて息を吸い込んでいますか?「なんだか良く分からないけど、出来るだけ大きな音で、出来るだけ長く」と思って「一生懸命」息を吸っていませんか?
 「こういうロングトーンは、実は「無目的」で意味がありません。特に初心者の場合、「へ〜〜っ」などと声がでそうな感じで息を吸い、「ふーっ」と尺八に向かって息を吹きかけます。音の最後の方は息が無くなり、ピッチが下がり、よれよれした音になるまで頑張って吹いていませんか?
 こういう修行的なことをやっていると、「そのうち力がつき、肺活量も大きくなり、息が長くなり、浪々と吹けるようになる」と思っていたら大間違いです。おそらく、全く上手になりません。下手のまんま、なんの進歩もないはずです。

私達はすでにブレスのプロ

 さあ、またここで普段の生活を考えてみましょう。
 人と楽しく会話している時に、「どのくらいの息を吸おう」と考えたことはありますか? 実に巧みに、自然に、いつの間にか、必要なだけ吸い込んでいます。また、声を荒げて人に注意をしたり、意見を強く言おうとすると、自然とたくさん息を吸い込みます。こういった場合、途中で足りなくなるなんてことはありません。
 私たちは長い人生の中で毎日息を吸い、会話の度に必要な息の量を的確に吸い込む訓練をして来ました。その意識は全く無いので、思い出しもしませんが、実に巧みで、その意味では私たちは「ブレスのプロ」なのです。でも小さな子は、しゃべっている途中で息が足りなくなり、吸い直したり良くします。それは、まだその辺に関しては素人だからですね。
 ところが、ブレスのプロであっても尺八の音の場合、どの程度の息でどの程度の長さや音量が出るのか?はじめから知っている人はいません。それを素人と言います。子どものように、前述の「無目的」ロングトーンをやっていても、20年近くやれば、そこそこ上手くはなるでしょう。でもこれでは時間が掛かりすぎです。この時間を長くても1年などの単位に縮小するのが「練習」です。

終わりまで同じ音量、音質で

 では、どうすればいいのでしょう。
 最初から無目的に長い音「ロングトーン」をするのではなく、時間を決めて練習します。
【方法】
 メトロノームなどを用意します。テンポを♪=60くらいにセットして4つでひと区切りの4拍子を心の中で数えます。1、2、3、4、1、2、3、4…ということですので簡単ですね。このテンポの中で4の時に息を吸い、1で音を出すようにします。このときに大切なのは、「特別に大きな音で力一杯」などではなく、「普通」でなければなりません。
 「普通」というのも難しいのですが、歌を歌うときに出す普通の声量を参考にしてください。小さな子の歌うときを観察すると、力一杯声を出しますね。これはとてもかわいいものです。でもこれは、小さな子は声を出すことにはまだ素人だからなんです。
 つまり素人とは、曲想に関係なく力一杯音を鳴らす人のことをいいます。
 皆さんは声についてはプロですから、プロの「普通」の声を出すときに使うエネルギー感を、尺八の音にも反映して下さい。「力一杯」なんてことは、普通、無いのです。
 その普通の力加減で上記4拍の繰り返しを練習するのが、ロングトーンより先です。この練習は、その4拍(実際には3拍の長さですね)に必要な息をさりげなく、しかも的確に吸う練習です。音は出だしから終わりまで同じ音量、音質を意識します。つまり、羊羹のような長四角の音を出しましょう。
 そこれで尺八のための「ブレス」を訓練します。これが出来るようになったら、時間を延ばして行きます。テンポを遅くすることも良いですし、そのままで、4拍子を2回つなげて2回目の4のところで吸うのも良いですね。ちょっときつかったら、逆にテンポを少し上げます。テンポを取る練習にも役立ちます。