目から鱗の尺八上達術 −あなたの努力は報われていますか?−

【第24回】基礎的練習方法4 良い音を出す方法 2011年12月(299)号

体内共鳴を使う

 声は声帯で作られていることは知っていると思いますが、声帯から出る音そのものは「ぶー」と言うような、どうでもいい音です。それが、喉や口の中と様々なところで特定の周波数を強調させるような「共鳴」を使って、言葉に聞こえる「声」を作っています。さらに、音程を変化させて「歌」を歌うことが出来ます。
 プロの尺八演奏家はこの機能を上手く使って音質に変化を与えています。これは、プロのような腕前になったら出来るというような難しいことではなく、人間なら誰でも出来る簡単なことなのです。
 この場合、口の外側で鳴っている尺八の音が、狭いノズルを介して反対側にある口の中や喉で共鳴しているとは考えにくいので、おそらく音そのものの共鳴ではなく、エアリードという空気の振動と、身体の中の空気圧変化のサイクルが同調しているのだろうと思います。詳しいことは専門家にまかせるとして、(言葉の使い方が正しいかどうかは分りませんが)「共鳴」「同調」させることで、豊かな良い音を出せることだけは事実です。

実際にやってみる

「チ」を声と尺八で交互に
 1尺8寸の「チ」を吹いて、その音程を記憶しましょう。その音の高さは別な楽器(ピアノやチューナーのA=ラ)で確認してもいいです。
 その「ラ」を声で出します、同じ「ラ」でもオクターブ違いでいろいろなので、低い方を選んで太い声で「オー」などと発音します。声は歌を歌うときのような声量で出してください。その声量と同じような音量で尺八が鳴りますので、はき出す息の量もそれなりに必要です。
 尺八の「チ」を吹く場合、先ほどの「ラ」の声を出したときと同じに身体の中を保ちます。そして、自分で声を出しているように息を出します。
 声を出すときの息の出し方と、実は尺八を吹くときの息の出し方はほとんど一緒です。違うのは声帯を振動させるか、エアリードを振動させるかの違いだけと言っても過言ではありません。
 何度も声を出しては「チ」を吹いてみましょう。自分の声のように尺八が鳴ってくるはずです。
 不自然な形の口で尺八を鳴らしてきた人にはこれが出来ないかも知れません。そういう方で、もう少しどうにかしたいと思われる方は、一旦口の作り方からやり直す必要があります。つまり、「オー」と発音する口とほとんど違いがない口で鳴らす練習からやり直さなければなりません。

●「チレツロ」を声と尺八で交互に
 さて、「チ=ラ」が声のように鳴るようになった人は、その1音下の「ソ」を発音します。「ラ」と「ソ」を「オーオー」と交互に出しながら、身体の中がどう変化したか記憶しておきます。そして、その変化を尺八の「チ」と「レ」に当てはめます。
 同様に、さらに1音下の「ファ=ツ」、その下の乙のロは1音半下になり、「ツ」と「ロ」の変化はかなり大きいことが分かります。
 このように、的確に身体の中を今から出そうとする音に合わせることで、豊かな音が出せるようになります。さらに、堅い音や鋭い音は、声の場合どうやって出すかを想像し、体の中を変えることで、声と同じように尺八の音がコントロール出来るようになります。

●オクターブ上を出す
 この応用でオクターブの跳躍も簡単にできるようになります。
 例えば、乙の「レ=ソ」の声を出しておいて1オクターブ声を上げてみます。のど仏のあたりが若干上に移動します。声を1オクターブ上げるために身体の中の構造をオクターブ上に合うように調整するからです。
 この方法で尺八もオクターブ上を出すことが出来ます。
 口のノズルを小さくすることは、声で言えば喉を絞めるのと同じで、声質が堅く緊張してしまいます。音質を保ちながらきれいな甲音を出すには、このような声の調整機能を十分に使うべきなのです。

歌うように吹く

 これからどんな音を出そうとしているのか? それを想像して身体の中を作って息を吸い、音を出します。これから出そうとする音に見合った音で息が吸い込まれますから、乙の「ロ」を出そうとした場合と「チ」とでは、息を吸うときの音にも違いが出てきます。
 その口が出来れば、私が尺八を当ててあげるだけで音は簡単に、そしてとてもいい音で鳴ってくれます。鳴りさえすれば、後は何処に尺八を当てたかを記憶してもらい、自分で尺八を持って頂けばもう終了です。
 体内の調整を伴って発音された音は立ち上がりが早く、きれいです。立ち上がりの早い音は息の音への変換効率が良いので、いくらでも小さな音が出せるばかりではなく、音の輪郭をはっきりさせます。また、体内との同調を伴って、とても安心感のある豊かな音を出すことが出来ます。
 自分の声として尺八が吹けるようになったら、鳴る音は思いっきり鳴らすというような意味のない鳴らし方はしなくなります。「歌うように吹く」これはとても大切なことです。ちょっとした意識の持ち方で、貴方の音は見違えるように良くなります。