目から鱗の尺八上達術 −あなたの努力は報われていますか?−

【第27回】基礎的練習方法6 音出しの練習 2012年3月(302)号

最初は「チ」から

 乙のロは尺八の基本と言われていますし、どうしても誰よりも朗々と鳴らしたいですね。でも、この焦る気持ちが内吹きになったり、胸式の呼吸を招いてしまいます。
 最初は乙のチを鳴らすことを推奨します。筒音と5度関係なので、意外とよく鳴ります。初心者を観察していると、喉の構造などを乙のロに合わせるのはなかなか難しいようですが、チは多くの人がある程度鳴らせます。自然な身体の構造がA(チ)に比較的あっているから?なのかも知れません。
 最初にチを練習して、その1音低いレの音程と音色を想像して鳴らす、次は2つを交互にならす、このような練習で段々低い音を出す身体の構造を確認して行くのが間違わない練習方法です。
 さて、このチを鳴らす練習ですが、尺八は構造上かなりでたらめに吹いても良く鳴ります(もちろんちゃんとした構造であれば…の話しですが)。これを利用して、唇の作り方を学びます。

音の出し方

 是非、次のような練習をやってみてください。

1、息を吸って吐くときに声を出します。「あっ、あっ、あっ、あっ」というように「声を出しているか、息を吸っているか」だけの状態を続けます。このときにみぞおちあたりに手を差し込んで、腹式であることを確認します。

2、声を出さずに息だけ出します。声を出すときの抵抗感が無くなるので、単なる出し入れになりますね。

3、息を出すときに出ようとする空気を唇で阻止しようとします。決して「ふ」と言うように口を突き出し積極的に空気を外に送りだそうとするのではなく、今出て行く空気を挟んでなるべく出ないようにするのです。ですから、唇は空気にひっぱられて外側に持って行かれないように内側、つまり歯の方向に引き戻すような力を使います。

 このように「息を吸う、はき出す空気を阻止する」という2つだけのアクションにします。先に唇を作ってから空気を送り出すのではなく、出ようとする空気を瞬時に捕まえる感じです。
 閉じ加減は「鳴ったら閉じるのはやめる」のが重要です。勝手な思い入れで必要以上に閉じる力で鳴らそうとしないことです。閉じすぎると体内の圧力は高まりますが、結局出てくる空気量は少なくなりますから、結果的に大きな音は出なくなります。
 力強く口を閉じると逆に音は貧弱になります。堅くてうるさい、やかましい音を「大きな音」と勘違いしないようにしましょう。大きな音のためにはそれなりに息の量も必要です。

唇を先に作らない

 音は口が適正に閉じられると勝手に鳴ります。自分で口を作って狙いを定めて空気をはき出すよりも、遙かに命中率が高まります。おそらく物理現象は「落ち着くところに落ち着く」からだろうと思います。ほとんど失敗がなくなります。
 これは絶対に出来ないといけないことです。
 というのは、声で「あっ、あっ、あっ、あっ」とテンポを刻むときには、息を出すのと声が出るタイミングは同時です、だから、ちゃんとリズムを刻めます。もし、そこに声帯を用意するという行為があって、それに時間がかかってしまったら、思った通りにテンポが刻めなくなるでしょう。
 同じことで、唇を用意するという時間が必要だとしたら、時間差が出来てテンポを刻めないのです。また、口を先に用意すると、発音しやすいように尺八の歌口をフィットさせてしまい、本当に必要なピッチで鳴らないことがほとんどです。
 ブレス後に甲音や弱音で必ずすりあげる人がいますが、口を先に作るからそうせざるを得なくなります。上級者でもとても多く、これを直すのは一苦労です。
 最初は「音を出す」ことにしか意識が行かないので、唇を無理矢理作って音を出そうとしますが、その努力はこのように後々無駄になってしまいます。最初からテンポを刻むための口を意識すれば、貴方の努力は無駄にならず必ず報われます。
 また、このはき出す空気を阻止する口の作り方は、甲音を出すのもとても楽です。これは身体の中が狭くなり押し出されて、口から外に空気がもれ始めますが、同時に口で阻止するので体内の空気圧が瞬間的に高まります。唇にほとんど負担を掛けずに甲音を出すことが出来ます。
 唇の用意をしてから、この爆発的な圧力の上昇と同じことをやろうとすると、身体の収縮を瞬間的に行う必要があり、ついつい大音量になってしまいますし、その割に立ち上がりの速度は上がりません。出る空気を阻止するやり方は、弱音でも強音でも使えるので、とても音楽的です。