目から鱗の尺八上達術 −あなたの努力は報われていますか?−

【第30回】基礎知識編−7 抵抗感と息の向き 2012年6月(305)号

確かな抵抗感

 フルートの宣伝文句にも「確かな抵抗感」という言葉が使われています。たぶん、音がちゃんと出せるようになった人には、この言葉のニュアンスは分かると思います。分からない人は、まだ音を出すことがちゃんと出来ていないと言ってもよいでしょう。
 初心者は音がちゃんと出ないのでこの抵抗感が感じられず、息をはき出す割には音は小さく、苦しくてクラクラするのです。仕方なく、口のノズルを小さくして、自分で「抵抗感」を作り出しているというのがほとんどです。
 実は抵抗感は自分で作り出すのではなく、「よく鳴らす」ことで作られます。ノズルを大きくして空気をはき出しているのに、何かにはき出すことを制御されているような感覚になります。つまり、息のはき出す量を多くすればするほど大きな音となって、はき出す時に感じる抵抗感も増してきます。
 ハスキーな声で「ハー」と言うのと、ちゃんとした声で「あー」という場合では、ハスキーな声は息の抵抗感が無く、あっという間に息が無くなりますが、ちゃんとした声の場合には抵抗感がありますね。大きな声を出してもハスキーな声の時よりも息が長持ちします。この感覚に似ています。
 電池に豆電球を接続すると光ります。代わりに抵抗のない(少ない)電線を同じように繋ぐと、電池が熱くなり壊れてしまいます。電球の中には抵抗のある線が入っているので電気が流れにくくなって熱を出し、光ります。このように何かのエネルギーは移動するときに抵抗があると熱や光、または音などの別なエネルギーに変わってしまいます。
 尺八も息をはき出すことで、空気の流れ方が乱れてエアリードという現象が起き、それが音という別なエネルギーに変わってしまうので音が出ている訳です。
 自分の唇をがっちりと閉じたり、喉を絞めて空気を出さないようにしている状態は、電池の内部抵抗を大きくして電圧を下げて出力を小さくしているのですから、当然大きな音は出ません。でも、そうしないと電池に抵抗のない電線を繋いだような感じですから、そのまま息をはき出すと自分が壊れてしまいますね、クラクラと…。

上達を阻害する教え

 電気の話でしたが、要するに自分の力で息が出ないようにして長持ちさせようと考えるのは楽器の場合には間違いです。でも、何故自分で口を閉じたり、喉を閉じるようになるかというと、それは「まず曲を吹きましょう。音は後で出るようになります」という教え方がそうさせているのです。
 つまり、「まずは電線を繋いでみましょう。後で何処かに抵抗が出来て光るようになりますよ」と言われているのと同じですから、マジにやったらショートして自分が壊れてしまいます。電池ならあっという間に壊れて使い物にならなくなるところですが、人間ですから壊れる前に電気(息)があまり出ないように防衛できてしまいます。このことが実は上達を妨げてきたのです。

息の向きの正しいイメージ

 まず考え方を整理しましょう。
 エアリードは何故起きるのか? 図のように尺八歌口の上面に空気が流れると、歌口のわずかな隙間から尺八内部の空気が外に引っ張り出されます。そうなると内部の気圧が低下するので空気は元に戻ります、しかし相変わらず外側には空気の流れがあるので、また内部の空気が引っ張られては元に戻ることを繰り返します。この繰り返しは管内で共鳴する周波数と同じになります。
 ということは、よく見て下さい。空気の流れは尺八の歌口(舌面と呼ばれる斜めにカットされた部分)と同じ向きです。つまり、ほとんど顔に対して直角に前方ですね。
 よく勘違いされることですが、「はき出した息が歌口で引き裂かれることで音が出る」とか、「管の中に空気が流れることで音が出る」というあり得ないイメージを持っている人が多くいます。また、尺八を口よりも下にセットすることから、空気の向きを顔に対して「直角に前に」ではなく、「かなり下向きに」はき出そうとしている人も多い。これでは効率の良いエアリードは起きません。
 このような場合が、電池に電線を繋いでショートさせているような感覚になります。空気の向きはあくまでも図のように真っ直ぐ前です。