目から鱗の尺八上達術 −あなたの努力は報われていますか?−

【第38回】パクパク奏法応用編(その1) 2013年2月(313)号

気持ちよく音が出せたら

 パクパクやりながら音を出すということは、口の動きと息を出すための筋肉等全てが同期しなければなりません。そして、この同期は演奏している音楽のリズムと同期します。この同期させる物の中に指も加えてみましょう。
 今「ロツレチ」の「チ」の音をパクパク奏法で発音しているとした場合、第4孔を開けておき、発音と同時に閉じるようにします。決して開けている音(この場合には「ハ」または「リ」の音)は出してはいけません。この方法を使うと非常に輪郭のはっきりした、四角い立ち上がりになります。この練習を一定のリズムで繰り返し練習しましょう。
 全てのタイミングが合わないと、効果がなかったり、いらない音が混じったりするでしょう。しかし、全てのタイミングが合ったときには、初心者なら思わずにっこりしてしまい、にっこりすることで音が出なくなってしまうことでしょう。フルートなどのキーメカニズムの楽器ではこんな荒っぽいことをすると機構が狂ってしまうので禁止のようですが、頑丈な尺八だからこそ出来る面白い奏法だろうと思います。
 出来るようになったら、全ての音で試してみましょう。各音一番効果のある指はどれかを探してみるのも良いでしょう。私の場合には「ロツレ」までは第三孔、「チ」は4孔、その他は使っていないようです。それも常に使うというのではなく、当たり前ですがそういうニュアンスがほしい時だけです。
 音の出だしが四角く出来たら、今度は音の切り際を四角くする練習です。これはそれほど難しくはないでしょう。息を止めれば良いのです。ただ、止めた後のことを考えると、止めるのではなく息を吸っても音は止まりますので、一定のリズムで四角い音を出す練習をするときには、息を吸うと同時に、先ほど閉じた指も離すというような動作を繰り返し行います。
 パクパクという口(顎)の開閉と、指の開閉、それと息をはき出すための筋肉の同期を是非練習して下さい。必ず役に立つと思います。

音を減衰させれば

 次は音の減衰についてです。箏曲『六段』の冒頭部分「レーレーツローロー」通常これは一息で吹ききると思いますが、最後の音まで朗々と鳴らせないという相談を受けました。相談に来た方の演奏を聴いてみると、まさにそのまま四角い音を並べて最後まで吹こうとしています。そして、最後まで続かないので小さな音で吹くのですが、それでも同じなのだと言います。
 確かに肺活量がものすごく大きければこんなフレーズ一息で吹けるでしょう。でも肺活量にかかわらず、上級者は四角い音を並べていないことに気がつくと思います。
 私は、大学は専修大学なのですが、そこで三曲研究会というサークルに所属していました。そこの尺八の講師が現在の人間国宝・青木鈴慕氏で、直接指導を受けていました。青木氏はこの「レーレーツローロー」を「レーンレーンツローンローン」と歌うのがとても印象的でした。この「ーン」は音の減衰を表現しています。
 箏でも「テーントーンシャーン」と一度弾いた音が勝手に減衰する様を「ーン」を使って表しています。お寺の鐘が「ゴーン」と鳴ったり、弦を「ポーン」と弾くなど「ーン」は音の減衰を表します。
 たかが「レーレーツローロー」。されど「レーレーツローロー」を最後の音まで朗々と演奏する秘訣は、この減衰を使った「レーンレーンツローンローン」にあるといっても良いでしょう。大雑把に図形にすると(下)、上が今回相談をしてきた人がやっていた演奏。下が解決策として提案した演奏の仕方です。
 パクパク奏法と共に早い立ち上がりで音を出した後は次の音に向かって減衰させる、次の同音は指を打つのでそこでまた基の音量に戻します。こうすることで、図形上は全部を同じ音量で演奏するよりも半分の息の量で最後まで行けることになります。
 「最後までたどり着く方法」と考えるとなんだかこそくな手段のようにも感じますが、そうではなく、減衰は一つの表現方法なのです。全てを四角い音で演奏することは正々堂々としているようですが、ともすると「さいたーさいたー」と全身全霊で大きな声で歌う小さな子の歌のようでもあります。