目から鱗の尺八上達術 −あなたの努力は報われていますか?−

【第39回】基礎知識編8 息を出すときの抵抗感 2013年3月(314)号

出来ないのではなくやり過ぎ

 酷かも知れませんが「貴方の音はこんな感じに聞こえます」と真似をして聞かせることがよくあります。「あ、私の音だ」。奥様同伴で来る方も最近は多く、その場合には「貴方にそっくり」と盛り上がります。
 音を真似するときには、身体のいろいろなところに普通以上に力を入れます。息を吸うことから始めないと似ていません。舌や喉に力を入れて「へー」と言うような音を出しながら思いっきり息を吸います。この場合、腹筋も堅くして胸から肩にかけて広げるようなポーズで息を吸います。
 音を出すときにも同様に力を入れて息を吐きます。口も普段よりもかなりきつく閉じます。当然口の中は狭くなり堅くなります。そのまま声を出すと、ものまねで関取の声を出すような感じになります。その声とそうして出した尺八の音は何となく似ています。後はその人のちょっとした癖等を加味するとよく似た演奏になるのです。
 このように真似した後に、少しずつ余計なところをやめて行きます。「全て余計なところを排除した音がこれです」と聞いてもらいます。たったこれだけのことを見せるだけでも、勘のいい人はガラッと変わります。
 つまり余計なことをやめれば良いのですから、難しくはないのです。
 音を出すことに関して言えば、何かが出来ないのではなく、多くの場合何かをやり過ぎなのです。

普通の声=普通の音

 さて、先月は四角い音と減衰系の音について書きました。この中の減衰系の音として「レーンレーンツローン」や、お寺の鐘の音「ゴーン」も紹介しました。両方とも声を出して言ってみましょう。おそらくこの文章を読みながら小さな声を出していることでしょうね。それで結構です。
 小さな声なので、一生懸命息を吸ったりはしなかっただろうと思います。普段の呼吸の範囲で声を出せました。この普段の呼吸が腹式呼吸です。話をしたり鼻歌を歌ったりは誰でも出来ます。普段の声程度なら特に大きく息を吸うことはありません。
 尺八も同じで、普通の音は普段の声程度の息の吸い込み方でちゃんと鳴ります。「音を出そう」と思っただけで何故今まであんなに力一杯息を吸っていたのかを考える必要があります。
 まずは普段の呼吸の範囲でどんな音が出るのかを確認してみるべきです。以前紹介した、椅子に深く腰掛けて音を出す「だらしな練習法」は、リラックスしたポーズでも音は出ることに気がつくことで無駄な力を排除し、腹式呼吸を意識できるようにしようという練習法でした。おすすめです。

喉を狭くする!

 さて、冒頭で紹介した音のものまねには尋常ではない力を必要とします。何故こんな力が必要だと思うのでしょう?
 いま、この文章を読みながら「ゴーン」と言おうとした方の中には無声音で試された方もいるでしょう。声を出さなくても喉を狭くすることで実際に声を出したときの状態を作ることが出来ます。
 声を出すには息を吐くわけですが、声帯が振動するので、その分息は出にくくなり、ブレスに抵抗感を感じます。これまで生きてきた経験から、この抵抗感を「喉を狭くする」ことで再現できるので、声を出さずに「ゴーン」を試すことが出来たわけです。周りに誰もいなければ実際に声で試すことが出来ます。喉を狭くすることはあくまでもシミュレーションでしたから、直ぐにやめることが出来ます。
 尺八も、実はちゃんと音が出るようになれば、声同様に音が出ているのに息は出づらい状態になるので、演奏家はあんなに息が長く持つのです。エアリードという空気の振動は、声帯の振動と同じように息が出ることへの抵抗となります。
 おそらく初心者は、CDや実際の演奏に合わせて息を出したときにこの抵抗感が無ければ息が持たないことは直ぐに分かりますから、口を堅く絞り込んで息が出づらくなるというシミュレーションを行うのです。しかし、初心者は声の時のようにこのシミュレーションをやめて実際に音を出してみることが出来ません。ずーっとシミュレーションの状態が続いて常態化してしまうのです。
 この息が出づらい状態で「もっと強く吹け」とか言われると、それはそれは尋常ではない力を入れるようになってしまうのです。
 1月に大阪と東京で「目から鱗の尺八上達術」の講習会をさせてもらいました。このシミュレーション状態から脱却できていない人がたくさん見受けられました。今後は音の出し方を最初に学ぶこと、教えることの重要性を伝えて行きたいと思います。

 第1回東京講習会の様子 

 ●第2回講習会の予告
 ・なかなか良い音が出ない人のための「首振り3年を3分で!」
 ・尺八を声のように自由に鳴らして見よう!
  ・ちょっと吹けるようになった人のために「カラオケを使った練習方法の効果について」
など