目から鱗の尺八上達術 −あなたの努力は報われていますか?−

【第40回】基礎的練習法8 ストローで実感する呼吸法 2013年4月(315)号

 たまに自分が今見ている物の色は、別な人にも同じように見えているのだろうか?と思うことがあります。ビデオカメラ同士の色合いがどうかなら、同じモニタに接続してその違いを確認出来ますが、人間の視覚聴覚データは取り出すことができないので、確認出来ません。
 自分が使った言葉を聞いた相手が、自分とまったく同じ感覚で受け止めたか? 特に尺八を吹くための身体の使い方については、同じ言葉を正反対に捕らえられる場面も多々あり、自分の言葉で相手がどう反応したかを良く観察しながら、言葉を使い分けて指導しないと、思わぬ無駄なことをさせてしまう危険性があり、言葉には気を使います。
 このコラムにいろいろなことを書いてきましたが、本当に思ったことが伝わっているかどうか?とても不安なのです。その意味では、直接お会いしてアドバイスできる「目から鱗の講習会」で皆様にお会いできることはとても楽しみです。お会いできれば、文章だけでは難しいところも、その人に伝わる言葉で、実際に伝わったかどうかを様々な方法で確認出来ます。文章だけではわからないと思っていた方は是非ご参加ください、とことんわかり合いたいと思います。
 今回は先月の続きで、言葉ではなかなかわかってもらえない息の使い方についてです。

歳だから?

 最近の事例で紹介します。85歳になる方のご希望…「高い音を出したい」「長く息を持たせたい」…昔の人は大きな音を「高い」と表現する方がいますので、高いと言われたら確認が必要です。案の定この方の「高い」は「大きい」でした。
 この方は大きな音を出そうとするので、肩で息をするように思いっきり(のように見えます)吸い込みます。その割に口を堅く閉ざすので鋭く細い息が出てきます。特に筒音を吹くときには独特のアクションが加わりますが、本人はやっていないと否定します。
 直ぐに息が無くなります。テンポ80くらいで4つが精一杯です。「歳だからかな?」「肺の病気じゃないかと思う」などと様々な弱音を吐きます。
 この方にはリラックスして椅子に座ってもらうことから始めました。座り方はこのコラム4回目に紹介しただらしな練習法の座り方です。とにかくずり落ちるほどに浅く腰掛けてお昼寝状態にしてもらいます。そうしてしばらく話をしていると、普段の呼吸に落ち着いてきます。
 そこで今している呼吸についていろいろ話をします。何処が動いているか? 喉の状態はどうなっているか? 呼吸は静かであるか? など…。このように、普段何気なくやっている呼吸を認識してもらうことが重要です。

ストロー効果

 そして更に秘密のアイテムを渡します。秘密と言ってもただのストローです。4ミリ程度の太さです。これを口にくわえてもらい、普段の呼吸のままで吸って吹いてを続けてもらいます。
 腹式呼吸が崩れないことを確認してどの程度息を吐いていられるか測定します。先ほど尺八はテンポ80で4つがやっとでしたが、ストローだと倍以上続きました。
 今度は私が尺八で簡単なメロディーを吹くので、同じ気持ちでストローを吹いてもらいました。ほとんど同じだけ息が続きました。
「歳とか病気じゃないみたいですよ」
「続くね、ちゃんと続くね」
「尺八の時にもストローと同じくらい息を出していましたか?」
「いや、こんなに出していなかったね、それでも続かなかった」
 このように、問題は呼吸のしかたであることを突き止めて、本人にも理解してもらい、「普通の呼吸のしかたで尺八は鳴る」ということを実感してもらいます。
 一旦これを体験してもらうと、これ以上楽な鳴らし方はないので、後の進歩はとても早く、この方の場合には3回目には自分の望みはクリアされました。このようにほとんどの人は呼吸という部分で行き詰まっています。
 最近この秘密アイテムをよく使います。ストローを口にくわえてそれだけで呼吸をします。ただ息を出し入れするだけなので、 口の中、舌や喉を緊張させる必要もなく、自然と腹式呼吸をする人が今のところ大多数です。腹式呼吸を実感するのに良いアイテムかも知れません。
 そして、そのストローから出る息の量を加減してみます。出口は一定なので身体の中がしぼむ早さを加減して出る息の量をコントロールします。できますよね? これが尺八では音量のコントロールになります。
 腹式呼吸について今ひとつ理解できないという方は、以前紹介しただらしな練習法と合わせて、このストローも是非試してみてください。糸口が見つかるかも知れません。

●4月に第2回講習会!(大阪・東京)
「これが最初にやるべき基礎訓練だ!」
 音が出せないうちに染みついてしまったクセを排除す方法を伝授します。クセのない吹き方から訓練を始めることが重要性です。カラオケを使った効果的な練習方法も紹介します。是非、ご参加を!