目から鱗の尺八上達術 −あなたの努力は報われていますか?−

【第41回】パクパク奏法補足法 2013年5月(316)号

 岩田卓也さんに命名された「パクパク奏法」は多くの人に試されています。若い演奏家や演奏家志望の方も大きな成果を上げています。しかし、息を出すタイミングと口を狭くするタイミングが上手く合わないために、最大の効果を未だ感じていない人も多いようです。
 今回はそのタイミング合わせに効果的な、誰でもできるし、またやっていることをご紹介します。

息出しと口狭めのタイミング

 まず、その前にパクパク奏法の確認です。
 パクパク奏法とは息を吸うときには口を開けて、尺八を鳴らすときには唇を狭くしてノズルを作り、同時に息をはき出すというとても簡単な動作に集約することで、最大の効果を上げる奏法です。
 しかし、私のところにパクパク奏法を習いに来る方を観察していると、微妙に口を狭くするタイミングと息をはき出すタイミングがずれていることに気がつきます。それでもらくに音が出せるようになったと喜ばれてはいますが、もう少しこのタイミングを合わせることが出来ないかというのが最近の課題でした。
 おそらく尺八を練習し始めた頃には、尺八を口に当てて口の形を作り、その狭くなった唇の隙間から息を出す…という練習をしてきたと思います。こうした練習は息をはき出すことと口を狭くするという行為はバラバラのタイミングで行われます。その結果、口のノズルを作ることと息をはき出すタイミングが合わなくなってしまっているようです。
 こうした、タイミングが合わないという状況から考えると、合わせることは大変なことのように感じますが、実は合わないことの方が不自然と言っても過言ではありません。

埃を吹き飛ばす!

 尺八を吹こうとすると口の形を作ってから息をはき出してしまいますが、これがもしも埃などを吹き飛ばそうとしたらどうでしょうか? よく綿埃や羽毛の破片のような物がふわふわと舞い降りてきた時に吹き飛ばしたりしませんか? 埃が視界に入ってきたときにはその距離や位置を瞬時に判断して的確にその埃に息を向け飛ばすことができます。
 この場合、上下の唇を揃えるために若干下あごを出しているはずです。そして、唇はやたらと力を入れて狭くする訳でもなく、適度な力の入れ方で効率よく埃に息が吹きかかるようにしています。その埃が遠くにある場合には沢山の息を出し、近くの場合には弱めの息にする等、息の量と勢いそれに見合った口の閉じ方を適切にコントロールしています。
 こういった能力はそのまま尺八の音量コントロールに使えます。
 まずは、埃を想定して吹き飛ばしてみましょう。その時の息をはき出すタイミングと口を狭くするタイミングを確認しましょう。大きめの口を開けて息を吸ってから埃を飛ばしても、そのタイミングは、ずれることなくできるはずです。
 または、先に息を吸っておき、軽く上下の唇を合わせておいてから飛ばすと、唇は閉じるというよりも息を出す瞬間に適切に力を入れて空気に方向性を持たせていることがわかります。
 唇同士は柔らかなところを上手に使っていますね。多分上唇は動かしていないと思います。埃や虫を的確に吹き飛ばすために、最も簡単で合理的な方法で瞬時に息を対象物に向けるための方法を知っているからです。これは誰にでもできるはずです。
 逆に、先に口の形を作ってから息を後で吐いて埃を飛ばしてみましょう。なんだかとても難しいですね。それにそんな方法でリズムを刻む場合、何処のタイミングがリズムに合うのでしょうか?

自然に広くなる口と喉

 埃飛ばしの方法では息を出すのも唇を形作るのも同じタイミングですから、リズミックに埃を飛ばすことができます。口を開けて自然に息を吸っています。その時に息を吸う音は非常に静かです。この静かな息の吸い方こそ尺八に求められている「口の中を広く開け、喉も広く開ける」ことなのです。わざわざこじ開けるのではなく、広くなっているはずなのです。これこそパクパク奏法そのものです。
 本当はこのように埃を飛ばすように息をはき出す訓練(と言うほどのことはないですね)をしてから、それに合うように尺八を当てて、まずは短い音を出す練習から始めるのが良いのだろうと思います。
 鳴る瞬間が自分の意思と同期できたら、まずはリズムを刻むことができます。テンポを遅くしたり、1音1拍だった音を2拍3拍と伸ばすなどすることで、ロングトーンの練習に近づいて行けます。
 尺八は民族楽器であり、その吹き方もその人それぞれで良いとは思います。いろいろな流派があって良いとも思います。しかし、最も簡単で誰でも音が出せるようになり、しかも、その後は様々な個性ある流派や演奏家の指導を仰げるだけの道筋くらい示せないものかと思います。