目から鱗の尺八上達術 −あなたの努力は報われていますか?−

【第42回】基礎的練習法9 指の開閉 2013年6月(317)号

瞬時に指を閉じる

 せっかく良い音を出せるようになっても、指を動かすと(音を変えると)上手くいかない人も少なくありません。上手くいかない理由はいろいろですが、多くは指の開閉の不具合と、体内のコントロールの不具合です。
 指の開閉の不具合とは、開いている孔を瞬時に閉じることが出来ずに、徐々に閉じていく状態です。これが上手くいっているかどうかは、歌口を口に付けずに尺八を空中で構えて、指を開閉します。上手くいっている場合には孔の周囲を指が同時に捕らえていますのでポンポンと良い音が出ます。ポンポンと切れの良い音が出ないようでしたら、指が孔の周囲を同時に捕らえていない、つまり徐々に閉じている状態です。
 このように徐々に閉じると、孔をほぼ閉じた状態(逆に言えばほんの少し空いた状態)で、さっきまで鳴っていた音が鳴らなくなってしまいます。そして、完全に孔が閉じた状態からまた音が鳴ろうとします。
 どんな物でも動いていない物を動かすには大きなエネルギーが必要です。エアリードも同じで空気の振動を起こすときにはそれなりエネルギーが必要です。ブレスの後、せっかくエアリードを働かせたのに、指の開閉の不具合で一旦エアリードを止めてしまうと、また最初からやり直しで大きなエネルギーが必要になってしまいます。せっかく動かしたエアリードは止めずに次の音に受け繋いで行くことが重要です。指を自由に動かす練習も合わせて行わないと、せっかくの良い音も使えなくなってしまいます。

●練習方法
 尺八の持つ5つの音を順番に発音することを考えた場合、全部の指孔を閉じた状態(ロ)からツレチまでは指を順に開けていけば良いのですが、チからハ(リ)に行く場合には、順に指を開けるだけではなく、下の二つの孔を閉じる動作が伴います。このときに開ける指と閉じる指のタイミングがずれてしまう人が少なくありません。
 チハ(リ)チハ・・・
 レチハチレチハチ・・・

などを集中的に練習してみましょう。一つの指の開閉の変化と同じように綺麗に変化しなければなりません。

ハ(リ)とロの関係

 尺八にはもう一つ難関があります。
 乙のロからハ(リ)までは右記のような下の孔を閉じる動作は伴うものの、それまではなんだかんだと一つ上の孔を開ける度に音は高くなってきましたので、生理的にも合うのです。しかし、その上の音(甲のロ)に行くときには、指の動作は最初に戻す(全部閉じる)のに、オクターブ上を出すことで、ハ(リ)の1音上を出すことになります。
 人間はこうした生理に合わないことをするときに迷いが生じて何らかの誤動作をしてしまい、良い音が途切れてしまします。

●練習方法
 甲のロ周りの運指を集中的に行いましょう。例えば、
 チハロツレツロハチー
などです。これをきちんと一息で一つながりの音の上がり下がりとしてなめらかに吹けるようにしましょう。

瞬時に指を開ける

 面倒なことを書きますが、ハ(リ)は短くて太いパイプの中に疎密波が一つです。
甲のロは長くて太いパイプの中に疎密波が二つできた音です。しかも、甲のロは指孔を開けた音ではなく、パイプの長さそのものの共振になります。この二つの音の違いは意外と大きく、二つをなめらかにつなげることは結構難しいものです。
 更に甲のロはパイプの全長ですからメリカリによる音程変化は最も少なく、逆にハ(リ)はメリカリによる変化が最も大きい音です。ハ(リ)が妙にスットンキョーな音の高さで演奏されているプロのCDも少なくないのですが、原因は上記のことに気がつかずにツロハローなどとフォルテで吹いた場合に、最も変化の大きいハ(リ)の音が異様に高くなってしまうからです。
 この二つの音の処理が上手いか下手かが、演奏上の上手い下手であると言ってもよいほどです。
 さて、難しい話になってしましましたが、指を閉じるときにはポンポンと音が出るように閉めなければならないことは書きましたが、開けるときも同じです。瞬時に指を引き上げるように開けないと、指孔の周囲の何処かが先に空き徐々に開くような開け方では、やはり、せっかくのエアリードが止まってしまい、またやり直しになってしまします。

●練習方法
 たかがロツレチハロー、ロハチレツローですが、なめらかに正確に!を心がけるだけでも上達があります。
 ロツレツロツレツロツレツロー
 ツレチレツレチレツレチレツー
 レチハチレチハチレチハチレー
 チハロハチハロハチハロハチー
ハロツロハロツロハロツロハー

まずはこのような同じ動きですが、最初の音を一つずつずらして指を動かすことをやってみて下さい。この場合、いちいち楽譜を見ないようにすることが大切です。