目から鱗の尺八上達術 −あなたの努力は報われていますか?−

【第43回】基礎的練習法10 尺八をセットする練習 2013年7月(318)号

口を形作る時間は?

 練習というと、練習用の曲とかスケールなどをスムーズに演奏できるまで練習するというようなことを思い出します。実はその練習に入る前のことも意外と大切です。といっても軽い運動とか腹筋トレーニングということではありません。
 「尺八を構えて、口に持って行き、演奏する」
 ここまでの一連動作です。この動作をテンポに合わせて手短くスマートにこなすことは、口を形作る上で非常に良い訓練になります。もしかしたら、はじめからこの練習をやるべきなのではないかと最近思っています。
 私の場合にはほとんど直前、息を吸うのとほぼ同時に尺八を口にセット、息を吸って演奏が始まる間に何かあれば微調節しています。このように、非常に短時間にセットが終了できるほど簡単な口にしておかないと、実際には演奏できないし、できたとしても長続きしません。
 受講生などをよく観察していると、

 1、尺八を構えると同時に口を形作り(実は構える前に顔を変形させている)

 2、顎を引き

 3、尺八を口に当てて

 4、ぐりぐりとやって

 5、人によっては歌口をぺろりとなめ(位置の確認か?)

 6、顔を起こし

 7、鼻から息を吸って(口をせっかく作ったので口を開けたくない)

 8、演奏開始(そしてよく見ると、最初に構えるときに作った口とはかなり違った形の口で吹いている)

 まったくの独奏でしたら、これも許されるかも知れませんが、音楽は独奏だけではなく、特に尺八の場合には別な楽器が伴奏に入ることが多いと思います。もし、その音楽が4/4拍子なら、自分が入るべき所の1小節前に準備を始めて3拍目で息を吐き、4拍目で息を吸いそのまま演奏するというのが標準でしょう。この短い間に尺八の口を形作る必要があります。

短時間で尺八をセット

 まず無駄な動作をやめましょう。先ほどの動作でいうと、2から7までは無駄な動作ですね。最終的に演奏している時の口の形になる訳ですから、最初からその口の形にするべきです。演奏中に(音を出しているときに)尺八を外して自分の顔と口を確認し、その形を一発でできるようにしましょう。
 顔と口の形をまず作って、そこに尺八をセットするという、単純化をやってみてください。もしも、尺八を外したときの顔が何ともみっともない…と思うようでしたら、見ている人も多分そう思っているので、できればやめましょう。
 変な顔は普段やりません、つまり訓練されていないので、長続きするはずがありません。おそらく基本的にはその辺のゴミを吹き飛ばしたりするときのように、よくやっている顔と口の形のはずです。
 そして、このように短時間に尺八をセットするときに重要なのは、上下の唇で「ふ」と言うような口を作って、そこから息を吹き出すという概念を捨てて、下唇と下あごは尺八の大きな歌口の大半を塞いでいる楽器の一部「装置」だと考えることです。
 息を吸うときにはその装置である、下あごと唇、尺八がセットになって、上唇と上あごから分離して、口が開き、息を吸ってからまた上下の装置が元に戻る、そして体内からその装置へ空気を送る…こんな感じを持てると多くの人が「えっ、こんな簡単に良い音が出るの」と言うようになります。
 最終的に上下の唇を使って「フー」と吹こうとしてしまうと、最初にせっかく作った口と、最終的に音を出す時の口の形が一瞬にして全く違ってしまいます。

練習方法

1、初級編
 椅子に座っているとして、まず尺八を膝に置きます。
 1、2、3、4、1、2、3、4、と数えながら2番目の1のところで尺八を口に当てます。3で息を吐き、4で口から息を吸い、次の1で音を出し2小節(1、2、3、4を2回分)音を出します。次の1、2、3、4の間はまた膝に尺八を置いておきます。
 このような4小節の繰り返し(1、2、3、4を4回数える)を何度もやりながら、1小節の間に最小限の動作で尺八を構えられるように練習します。

2、上級編
 初級編を半分の時間で構える訓練。最初の3で初めて構えて4で息を吸い、次の1小節間音を出し、2拍休んで繰り返し。

 これそのものも実はパクパク奏法の練習なんです。無駄な動作の徹底的な排除は、演奏前の不安をなくします。不安とストレスは交感神経を高ぶらせて、胸式呼吸を引き出します。パクパク奏法はストレスをなくし、副交感神経と腹式呼吸を引き出します。