目から鱗の尺八上達術 −あなたの努力は報われていますか?−

【第44回】基礎的練習方法11 カラオケの有効利用 2013年8月(319)号

著しい成長をとげる人

 かなり古い音源になりましたが、私は「Essence again」というCDを出しています。カラオケ(マイナスワン)版もあり、多くの人に利用されています。本誌の売上げランキングでも何度も1位になっていますので、この記事をお読みの方でお持ちの方もいるのではないかと思います。演奏してみたい曲があれば、なのですが、こういったカラオケを使った練習方法も上達の手段としては実に有効だと思います。
 私の工房で行うカラオケ講習会でのことですが、10年前と比べて最近の皆さんの演奏能力は格段に上がっているということがわかります。10年前には全員が最後までたどり着くことすら怪しい感じで、2時間の講習会でどうにか1曲を最後まで吹けるようになる、というのが当時の状態でした。
 最近、同様の講習会を行うと、とりあえず全員が最後まで演奏はできます。従って表情の付け方とか、もっとよくなる演奏方法など、かなり音楽的な指導ができています。もしかしたら、講習会で手に入れたマイナスワンCD等で練習をして来た成果なのではないかと思います。
 また、講習会終了後の打ち上げ会では、持ち込みのいろいろなカラオケで演奏を楽しむのですが、その時にまったくリズムがつかめず、何処を演奏しているのかも分からなくっていたような方が、マイナスワンによる練習方法を取り入れて、半年程度経ったときには、堂々とひとりで大勢の前で演奏できるようになっていました。
 その方はその後、手でも持ち歩ける程度の小さなPAシステムを紹介してほしいということを言ってきました。なんと目的は老人ホームなどの慰問を行うということで、今でも続けられています。
 最近、その方の演奏を聴かせてもらいましたが、メロディだけではなく、間奏や後奏ではアドリブも加えていました。その方の最初の頃を思うとすばらしい成長ぶりで、感無量といったところです。実はこういった方はこの方ひとりではありません。

ワンランク上の練習方法

 カラオケ、マイナスワンの良いところは、きちんとした音程とリズムで、何度も相手をしてくれるところです。生身の人間同士だと、特に初心者同士ではいったい誰が正しいのかもわからなくなり、練習になりません。また、上級者を相手にする場合には、何度もお相手してもらうことに気が引けてしまいます。その点カラオケは、文句も言わずに何度でも演奏してくれますから、基礎的な練習相手としてももってこいです。
 カラオケとは歌手のレコーディングのために予めバックの演奏(オーケストラ)を録音しておいた物です。歌が入っていないので空のオケ、カラオケと呼ばれています。マイナスワンも同じですが、こちらは歌というよりは、何か一つの楽器が入っていない物をそう呼びます。
 カラオケは元々が歌です、歌には歌詞が付いています。この歌詞を読みながら、音の出し方を工夫する練習方法がカラオケを使った、ワンランク上の練習方法です。ただ音を正しく並べるだけではなく、歌のニュアンスを尺八で表現してみるのです。フォルテとかピアノとか音符の長さだけではない表現の仕方がたくさんあります。
 例えば、4分音符や2分音符が並んでいても、例えばここに「ずーっとー」という歌詞が当ててあったら、小さな「っ」のところに向かって音は小さくなり、少し空いて「とー」と続くはずです。そして、その言葉を歌った場合、 もちろん子音は尺八には使えませんので、大まかなことになりますが どのような口の中になるか?どんな声になるか?考えます。
 こういった「歌の真似」「歌を想像すること」が実は表現力をアップさせることにもつながっていきます。

 最近は簡単に良質な音で録音できる装置もたくさんあります。コンピュータやそうした機器にカラオケを取り込み、それに自分の演奏を録音して楽しむことも簡単にできる時代です。録音してみると、更に自分の欠点に気がつき、修正点もはっきりしてきます。ここまで来ると、カラオケのかなり上級な利用の仕方ということになるでしょう。
 先日も東京芸大の学生達が私のスタジオで、こうした録音をしてみました。当然彼らは上級者といってよいのですが、ブレスが汚いとか、雑だとか、「こんなところで変なすりあげをしている」「このピッチが良くない」と、録音してみて気がつくことが多かったようです。
 いろいろ便利な時代になっています。今まで10年かかって習得してきたものを、1年に縮めることすら可能です。是非貴方も取り入れてみては如何でしょう。