目から鱗の尺八上達術 −あなたの努力は報われていますか?−

【第46回】基礎的練習法13 スケール練習A 2013年10月(321)号

5音階を身体に!

 先月の続きです。尺八は5つの孔を持った楽器です。通常5つの孔があれば6種類の音が出せるのですが、尺八は全部閉じた音と全部開けた時の音を同じ音程にしてあるために、指孔の順次開閉だけでは5種類の音(音の高さ)しか出せません。他の国の民族楽器は裏に開けてある指孔も別な音程になっているので、指孔の数より1つ多くの種類の音程を出せるようになっています。尺八はそうせずに5つの音しか出ないように改造してきたようです。
 これはとても重要なことで、尺八で出せる5つの音はペンタトニックと呼ばれ、西洋クラシック音楽で完成された7音階と違って、その音階を持った国や民族の音楽的特徴を強く表した音階です。この音階を身体にしみこませることは、尺八を演奏する上で大切なことです。先月と合わせて、今月の練習も是非楽譜など見ないですらすらと吹けるように練習してみてください。



洋楽の発展の仕方

 日本は音楽教育の基本が西洋クラシック音楽です。幼稚園の時からドレミファソラシドを習います。ドレミファソラシドが正しいものであり、その中のいくつかが抜けている音階を未完成な、遅れたものと感じてしまう傾向があります。つまり、5つの音しか持たない音楽をやっている自分たち民族が遅れているという感覚になってしまします。
 しかし、そうではなく、世界中の音楽、民族音楽家ではなくジャズもポップスも皆、同じようなものであり、西洋クラシック音楽だけが特殊な発展を遂げただけなのです。
 特殊な発展とは分業化です。
 曲を作る作曲家、その作った設計図である楽譜を読んで演奏できる演奏家、それをまとめて指揮する指揮者などの分業化が確立して、オーケストラや弦楽四重奏団などの、商品を作る会社がたくさんできて、演奏家はそこに就職するようになりました。その商品を販売するコンサートホールなどもできました。指揮者は、今で言う最高経営顧問CEOのように特別な存在として引き抜かれ、高額な報酬で雇われるようにもなりました。
 この過程で音楽の設計図の書き方が統一されました、五線譜です。
 確かにすばらしい発展です。このシステムを我が国も導入しない手はない、ということで今のような音楽教育になっているのですが、実はこんなに自国の音楽を捨て去るように西洋クラシック音楽を基本に教育している国は珍しいのです。本当は西洋クラシック音楽が作り上げたとても優秀で便利なシステムを、自分たちの国の音楽に導入できないかと考えるべきだったんですけどね。

伝統音楽と大衆芸能

 とても残念なことに、箏曲も尺八音楽も民謡も長唄も端唄も小唄も、みんな国から捨て去られようとした日本の民族音楽なのに、その中の一部の音楽を「伝統音楽」、その他を「大衆芸能」とに分けて、どことなく西洋クラシック音楽と対等の地位にあるのが「伝統音楽」その他を「大衆芸能」と呼び、差別しているようなところがあります。
 西洋クラシック音楽は分業ですから、自作自演は基本、ありません。その他の音楽は自作自演が基本です。西洋クラシック音楽はまた、作曲家の要求に応えるべく楽器の改造を重ねてきた上に、楽譜がなければ手も足も出ない演奏家を大量に生み出してきました。これはある意味悲しい歴史でもあり、民族音楽の即興性は多いに見直されています。
 なのに、我が国では民族音楽という意識が依然希薄です。こんなことで7年後の東京オリンピックで、日本人が誇れる音楽を世界中に発信できるのか?心配になってしまいます。
 と、今頃愚痴っても仕方ありません。せっかく尺八を好きになったのですから、尺八の指孔の位置と個数に日本音階をメモリーしてきた我々の優秀な祖先達が何を言いたかったのか? 指孔の開閉だけでできる様々な簡単な音型から感じ取っていきたいものです。