目から鱗の尺八上達術 −あなたの努力は報われていますか?−

【第48回】基礎的練習法15 指孔の開閉練習(2) 2013年12月(323)号

『春の海』の思い出

 今回は尺八の音階を身体にしみこませる訓練の実用編です。
 実は私がはじめて演奏できるようになった曲がこの『春の海』でした。楽譜もなく、1尺8寸しか持っていなかった頃のことです。
 冒頭の覚えやすいメロディーはすぐに記憶できます。それを吹いてみると、指孔の開閉だけで出来ることを発見、早速レコードを買ってきて合わせて吹いてみましたが、思った通りではありませんでした。それはそうですね、レコードでは1尺6寸で演奏されていますから、持っている1尺8寸ではなんだか面倒な指使いになってしまいます。
 何も知らないころでしたが、きっと短い尺八があるんだろうと想像していました。そこでレコードの『春の海』を何度も聞いて覚えてしまい、1尺8寸で吹きやすいように、つまり一音下げて記憶の通り練習するということをやっていました。
 こんなことが出来てしまうほど、この『春の海』は覚えやすく親しみやすい名曲です。世界中に知れ渡った理由はこんなところにもあったと思います。

『春の海』を題材に

 『春の海』は1尺6寸で演奏するので実音では譜例@のようになります。しかし、これまで尺八の音階を身体にしみこませる訓練に使ってきた譜例では1尺8寸用の五線譜を使ってきましたので、ここではあえて一音下げてご紹介します(譜例A)。


 『春の海』の冒頭部分は有名な民謡、追分風のメロディーですね。箏も揺れながら演奏します。つまり、これはまさしくテンポの自由な追分を表現しています。しかし、自由でありながら箏と上手く絡んで演奏しなければなりません。指使いは簡単ですが、演奏者の歌心が試される重要な部分です。ではありますが、そんな難しいことを考えずに、まずは指孔の開閉だけで演奏できる名曲を楽しみましょう。
 ついでに紹介しておきますが、譜例Bの縦譜では「レーツツロ」のようにレが付点四分、次のツツが十六分2つになっていますが、実は五線譜では譜例Cのように十六分2つではなく、三連符になっています。縦譜(指使い譜、タブ譜)はとても便利なのですが、このような解釈が挟まると、元々はどうだったのかがわからなくなるところに若干問題もありますね。

 さあ、そして練習にはもってこいの部分が譜例Dです。これはまさにスケール練習そのものです。難しそうに見えますが、全ての音は尺八の指の開閉だけで出すことが出来る音ばかりです。そして、規則性のあるパターンの繰り返しです。

 ゆっくりから始めて下さい。確実に指が動くようになったら少しずつ速度を上げて行きます。