目から鱗の尺八上達術 −あなたの努力は報われていますか?−

【第49回】総集編(前編) 自然な行為ってなに? 2014年1月(324)号

 明けましておめでとうございます。
 この連載がはじまってから4度目の新年のご挨拶になりました。この連載も残すところ今回を含めてあと2回となります。今後はまとめた物を単行本にしようという動きになっていますので、是非ご期待ください。あと2回の連載は、これまでの総まとめをしたいと思います。
 パクパク奏法…このおかしなネーミングのせいもあり、ずいぶん「目から鱗の尺八上達術」が全国区になったように感じています。そして私自身、この「顎をパクパクさせる」ということに集約するだけで、これまで四の五の言ってきたことが全て解決できる、説明できることに気がつき、講習会を開催したいという気分にもなりました。名付け親は尺八キング岩田卓也さん! 改めて良いネーミングを付けてくれたことに感謝します。

初心者への実験

 「言葉」とはこの連載で改めて難しいと感じました。私が指導してある程度上手になった人は「結局何もしないということですね」という言葉を使って上達した自分の喜びを表してくれていました。多分、いろいろ自分で工夫していたが上達しなかった人の感想だったのでしょう。しかし、それは何もしないということではなく、自分で考えた方法からすると、いかにも自然で簡単に思えた人達がそう言うのです。
 「まったく初めて尺八を体験する人達をどのように指導すべきか」の実験をしてみました。最初から尺八を与えて「吹いてみましょう」ということで始めるグループと、最初に楽器を持たせずに目の前につるしたティッシュや植木の葉っぱに息を吹きかけることをやらせるグループに分けての実験です。  最初に尺八を与えてしまうと、ほとんどの人はカッパの口をして息を下方向に吹きかけようとします。多分、ビール瓶を鳴らした経験もあるでしょうし、楽器を下顎にくっつけるので、「自然と」息を楽器のほうに向けてしまうからでしょう。つまり、何も指導しないと息を下向きに吐き出すのは、普通の人間にとっては「自然」ということなのだろうと思います。  もう一つのグループは尺八を鳴らすのに、最初に別な物に息を吹きかける練習をさせるわけですから、不自然なことをやらせるようにも感じます。しかし、尺八をあっという間に鳴らす、鳴らさせる方法としてはこちらが圧倒的に優れています。実際に、この方法で小学生などに対しての体験学習をされた方々からは「ほとんどの子が鳴らせました」「鳴らせるまでに3分とかかりませんでした」というお手紙が多数来ていますから、臨床試験段階に入ったかな?と思います。

簡単に鳴るということは

 今現在の尺八演奏をしている方の多くはカッパの口です。つまり、これも自然なことなんですね。独学をすると大半はカッパの口になります。その真似をさせるとほとんどの初心者は鳴りません。だから「尺八は難しい」「首振り3年」などの言葉が生まれるのでしょう。わざわざ「難しい」と言われる楽器は本当に珍しいと思います。
 みんな何十年も苦労してきたのに、「2分や3分で鳴らせる方法は卑怯だ」とか、「そんな苦労をしないで鳴らしたって邦楽にはなじまない」などと言う人もいるようですが、楽器を鳴らすことに苦労するのではなく、早く音楽面で苦労させてあげたいと思いませんか? それが本当に楽しむことなのですから。
 現在やっている講習会の趣旨は、「簡単に鳴らせるということは音の立ち上がりが早く、早いということは思ったように感情表現ができる」ということを伝えると共に、そのために今見ているところ(正面)に息を吹きかける方法を取ります。それは上下の歯の位置を揃える方向に下顎を移動させることですが、このことはろうそくを消したりゴミを吹き飛ばすときに行っている、もう一つの自然な人間の感覚です。この顎の移動で口の中が広くなり、ブレスも楽になり、腹式呼吸を引き出し、結果的にとても自然に感じるということを伝えています。
 腹式呼吸は副交感神経が活性化された状態を引き出し、リラクゼーションを引き出します。その状態で発せられる音楽はまたは音、聴く者をリラックスさせる効果があるのだろうと思います。良い声とはずっと浴びていたい声なのだそうです、尺八の音もきっと何時までも浴びていたい音が良い音なのだろうと思います。尺八人口が減っていると言われます。それは浴びていたような音が減ってきたからではないでしょうか?