【新】目から鱗の尺八上達術 −あなたの努力は報われていますか?−

【第1回】教材に必要な条件 2019年8月(391)号

 皆様、大変ご無沙汰しています。前回の連載(2014年2月号の第50回で終了)後、大きな反響をいただき、是非とも書籍化を…というご要望をたくさんいただきながら、私自身の力不足で書籍化は未だ叶っていません。
 今回、追加で12回の連載枠をいただきました。極力皆様の役に立つ内容になるように頑張ります。

共通の教材のために

 習う人の間で不平等にならない共通した教材が必要だろうと思います。
 教材は現在、尺八が様々な流派や用途のために、それぞれに最適化された状態で販売されています。その楽器、その音楽に適した教え方をそれぞれの師匠が独自に行っている状態で、それではとても平等で共通した教材や教え方とは言えません。
 同じ性能、しかも高性能である尺八が必須です。出来ればその性能を保ちつつ極力安価で安定した尺八、そしてそれに対しての教材が望まれます。おそらく尺八界の夢でしょう。この夢の実現には尺八の構造的な研究が必要であり、私は30年以上前からそれに取り組んできました。
 歌口の研究に始まり、効率的には・・・・・最高の性能を発揮する歌口の発見と、その歌口に安定して空気の流れを与える吹き方の研究、そこから導き出される理想的な内径と外形を持った尺八を求め続けました。そしてこの度、超精密加工が可能なNC旋盤で作られたアルミニウム素材の尺八の製作に成功しました。
 この計画は20年前にスタートしましたが、数々の困難があり、失敗の連続でした。しかし、近年の3Dプリンタの発展で大きな進展があり、本格的な製作の前にデータ確認が容易になり、今年やっと生産にこぎつけるところまでたどりついたのです。
 この安定した尺八は、手にした演奏家が直ぐにステージで使えるレベルに達するというもので、その様子はYouTubeで見ることが出来ます(QRコード)。
 この研究の過程で様々なことが発見され、それがアイディアとなり「目から鱗の尺八上達術」が生またのですが、また新たに楽器の完成から多くのことを学び、新連載への夢が膨らみました。

最高の内径を見つけること

 さて、前述の「効率的には」に傍点を付けたのは、尺八に求められている性能は効率ばかりではないからです。  今回作られたメタル尺八(開発コード「KATANA」)そのままで商品化していきますが、目的がもう一つあります。
 尺八研究家の志村哲さんとの出会いから、私が通常吹くことの出来ない延べ地無しの古い銘管と呼ばれるものの音を聞く機会がありました。そのとき尺八制作者として感じたのは、音質そのものは私が作る楽器と同じ方向を向いているという印象です。
 ある予想を立てました。それは、おそらく尺八に携わる人は、昔からある完成した内径を求めていて、実は歌口の形状と指孔の位置と大きさ(深さ・形状)の違いで、様々な尺八の特徴が作られてきたのではないかというものです。その予想を元にオリジナルタイプの内径のまま、指孔の位置と直径を変えただけの「オリジナルタイプB」を発表しましたが、精密加工の金属尺八でもこの予想の確認が出来ました。
 この最高の内径を発見するためにどうしても「効率的には」最高の歌口を作り出し、それによって最高の内径を導き出すという手順が必要でした。「努力が無駄にならない」教材のためにもこれは重要なことだと考えています。
 次回は、これまでの連載のおさらいをします。構え方、口腔内の形、息の向き、練習方法など、思い出してください。