【新】目から鱗の尺八上達術 −あなたの努力は報われていますか?−

【第7回】究極のアタック 2020年2月(397)号


 前回は音が生まれるところを見つける練習をしました。これは音をゆっくりと立ち上げていく練習といっても良いでしょう。音がない状態つまりゼロから一定の音量になるまでの時間をコントロールする練習です。非常にゆっくりとした立ち上がり方から、徐々に速い立ち上がりをコントロール出来るようになります。
 この音の立ち上がり(アタック)を速くしていった行き着く先に、瞬間的に音を立ち上げる、究極のアタックがあります。今回はその鋭い音の立ち上がりの練習です。

タンギングのデメリット

 鋭く音を立ち上げる方法としてよく使われるのがタンギングです。これは「tu」というように舌を使って音を切る奏法です。元々笛類にはこの方法はなく、世界中の笛類でも大昔は同じ音が連続した場合にはどこかの指を瞬間的に開閉して音を切っていました。ただ、指で出来る方法は瞬間的ではありますが、音と音の間に変な音が聞こえます。要するに指を開けたときの音が混じるわけです。指定した音以外の音を出さないでほしいという要求に応えて発明されたのが、舌を使って空気の流れを瞬間的に遮ることで音を切るタンギングという方法でした。
 このタンギングを音の出だしに使うことである程度鋭い立ち上がりを実現できるのですが、尺八の場合、「tu」と舌を上顎に付けることで口腔内の容積を狭くするとことになり、低い音では頭に「シュッ」という雑音が大きく、音そのものは痩せた感じになってしまいます。

指孔を閉じる音を認識する

 究極の立ち上がりは指を使います。
 尺八の指孔を全部閉じて第2孔(一番器用な利き手の人差し指で塞いでいる孔)を指でポンポンと叩くように閉じてみてください。指の動きがある程度訓練された人は心地よい打楽器的な「ポンポン」という音を出すことが出来ます。
 あまり綺麗にポンポンと鳴らない人は、貴方の弱点として指の動きがまだ訓練されていませんので、ポンポンと切れのある音が出るように練習しましょう。尺八を吹かなくても出来る練習です。
 綺麗にポンポンという音を出すためには指孔の周囲に指が同時に着地する必要があります。もしも、どこかが先に触って全部閉じるのに時間差が出来た場合にはポンポン鳴らないか、または切れの良い明瞭なポンポンという音が出ません。この音を綺麗に出せるようになると、演奏にも切れが出てきますので、是非普段の練習に取り入れてください。
 このポンポンという音は尺八の管内にすでに振動が起きていることを意味しています。つまり、息で音を立ち上げなくても指で打楽器的スピードで音を立ち上げられることを意味します。
 このポンポンという音にタイミングを合わせて息を当てることで、究極の鋭い立ち上がりが実現できます。つまり、音の立ち上がりは打楽器的スピードになるということです。

練習方法

1、前回の「音が生まれる瞬間」にやっていたような口の形を作り、尺八をその口元に当てて、まずは息を吐かずに、ポンポンと音を出しその音を良く聞き、その音を声で出した時のことを想像します。
2、想像すると、口腔内がその音に共鳴するような形になってきます。
3、しばらくポンポンという音を聞いたら、ポンポンという音にタイミングを合わせて、自分でその音を真似するような気持ちでほんの少し息を出してみます(ホッ、ホッという感じです)。
4、最初は単に打楽器的なポンポンでしたが、息を少し出すとポンポンに尺八の音が被ったように聞こえてきます。
5、徐々に指を強く打ちならし、息の量も増やしていきます。