【新】目から鱗の尺八上達術 −あなたの努力は報われていますか?−

【第10回】必死の形相、なぜ? 2020年5月(400)号


 究極の上達術、それは普段の表情のまま演奏する!というのが、どうも結論です。
 まるで泣き出しそうな顔とか、必死の形相とか、無駄に眉毛をつり上げているとか…。尺八を吹くための口元を作るだけなのに、いかにも苦しそうで、「大変だな〜」と思われてしまうような顔で演奏しているのは、どこかに無理があるからです。
 やたらと息を吸う音がうるさいとか、吹く前に舌をぺろぺろといわゆる「舌なめずり」してみたり…。尺八の世界はどこからがプロなのかよく分からないのが実情ですが、やはりちゃんとした演奏をしている人は普通の表情で、ブレスも静かです。
 もちろん、それなりに気合いを入れたり、ある種の演技として表情を作ることはありますが、あれはあくまでもその演奏に合わせたもので、つまりやめることが出来る表情です。所詮日本の民族楽器ですから、なにも個人芸でかまわないのですが、これだけ世界から注目されてくると、これまで「まあいいや」で済ませていられたことは淘汰の対象となってくるでしょう。

自然なブレスが出来ているか

 現在のプロ、専門家はほとんどが自己流です。また、成長をする過程で「尺八は苦しそうな顔で演奏する」ことが日本では普通になってしまっているところがあります。確かに必死の形相とか、苦しそうな顔は「一生懸命」「誠心誠意」やっているようにも見えます。しかし、本来は奏でている音楽の表情と顔の表情は同じであるべきだろうと思います。
 私が指導する中で特に気を付けていることは、良い音になったかということはもちろんなのですが、自然なブレスが出来ているかどうかです。
 いくら良い音でも苦しそうなブレスとか、舌や喉に余計な力を入れて息を吸っていたり、「うっ、うっ」などと声が出てしまうような吹き方は、どこかに余計な力が入っているので、よく観察してそれを取り除くように指導します。
 こういう吹き方の音はそもそも「良い音」には聞こえないものです。吹奏楽などのコンクールでもそういったノイズは無視して、出てきた音だけを評価しようとしていると聞きます。これもたぶん急成長を強いる中で無理な吹き方であっても目標を達成することを重視する結果でしょう。
 これを読んでいる多くの人は急いでプロになろうとしている訳ではないだろうと思います。なので、おかしな顔や、静かな曲なのにブレスだけうるさい、というような吹き方にならないようにのんびりやりましょう。
 プロになりたい人なら、なおさらです。自称プロの方で、このような指摘に該当する人は、このコロナウイルス騒ぎで自分を見直す時間がたくさん出来た今、じっくりと見直してみるのも良いかと思います。

普段の顔の表情で

 普段のままの顔で…とはどういうことか?
 まずは息をどういうふうに吸っているかを確認します。普段は実に静かです。大きな声で歌おうとするときにも実に静かです。その時と尺八を吹く時のブレスの仕方に変化がないか、よく観察してください。尺八を吹くことは特殊な喉や口の使い方をしている訳ではあません。実に自然に出来ていなければいけません。
 顔の表情が自然であること。大体は上唇から上の顔の筋肉は使いません。眉を妙に引き上げたり、笑い顔だったり、泣き顔だったりしていませんか? まずは白けたよう顔で、口元だけを動かせなければなりません。
 これには良い練習方法があります。鏡を見ながら「あー」と歌うように声を出します。
 出しやすい声の高さで大丈夫。自分で「綺麗な声」と思えるような声を出してみてください。激しいロック歌手のような声ではなく、どちらかというと裏声などで「美しい声」を出すイメージです。そういった声は顔の表情も穏やかです。そして口の形も綺麗になってきます。
 この綺麗な形の口をそのまま閉じたのが尺八を吹く時の口、つまり、口を開けても閉めても顔の表情は変わらないということです。
 これまで学んだストローを使った訓練を、前回の顎の出し入れとともに、もう一度顔の表情があまり変わらないように注意しながら復習するのが良いかと思います。